第十七話「聖戦」その1

「KENNちゃん、付き合って…」僕にはどうしてKくんが、またあのジムに誘うのか

さっぱりわからなかった『あんなにボクシング、嫌がってたのに』

気持ちの整理がつかないまま「その土曜日」はやってきた。Kくんは学校でもなんだか

気分が高揚している感じ…体育の授業の時はN子にボクシングごっこを仕掛けてふざけ

あっていた。体操服から伸びた長い脚がステップを刻んでいた…

学校から帰ってお昼ご飯、Kくんはいつもの通り颯爽と自転車に乗って僕をジムに誘い

に来た。「KENNちゃん!行こう!」とっても張り切った感じのKくんと怪訝な気持

ちの僕、無言のまま可愛いKくんのお尻やきれいな長い脚と白いハイソックスを見つめ

てペダルを漕いだ、あっという間にジムに着いた。

元気よくジムに飛び込んでいくKくん、「こんにちわっ!」1階で練習していた大人の

練習生の人たちが駆け寄ってきた。

「KくんKENNちゃん大丈夫か?」口々に僕らに言葉をかけると頭を撫でまわされた

。「うん!もう平気だよ!みなさんありがとうございます!」Kくんは丁寧に挨拶する

と2階の少年部のフロアに駆け上がっていった。早くもサンドバックを叩いているMく

んが真っ先に僕らのところへ飛んできた。「お!よく来たな、もうすっかり良くなった

か?」

「うん大丈夫!」「まーね…」「そーか!」Mくんはステップを踏むと僕に向かってジ

ャブを出した…無意識によける僕…

「KENN!大丈夫だな、いい反射神経してんな」……Mくんは僕の頭を優しく撫でた。

 会長が僕たちのところに駆け寄ってきた。「おおっ!さあこっちへおいで!」

会長は僕とKくんの肩を持ちながら会長室?に誘った。

「どうだ、思いっきり強い奴に思いっきりノックアウトされた気分は?」「…」

「また2人が来てくれると思ってな、これ用意しといたからな、着替えて来い」またも

や短い白の…今度はピカピカのサテン地に横にライン1本、赤と青…それにあわせてラ

ンニングシャツもしっかり。とどめ?はシューズ、

白い23センチのボクシングシューズは真っ白で長さが今までのものより長かった…

更衣室でKくんは「青ね僕」と言って嬉々として?着替えを始めた。

『やっぱりヘンだよなぁ』椅子に座って白いハイソックスの上に2人で真新しいシュー

ズを履いた。「わあっ、これブーツみたい」Kくんは気に入ったようで念入りにひもを

通すと、鏡に映して軽いシャドー…「きれいな脚だなぁ…」僕は目のやり場に困った。

 大きな鏡に映るKくんと僕、その中の自分の姿を見てまた不思議な…準備運動、そし

てロープワーク、コーチや先輩、Mくんがかわるがわる僕らのところにやって来た。一

通り終わるとコーチが僕に声をかけてきた、「KENN、練習用のグローブつけて来い!」

「はぁい…」コーチに誘われてリングに上がった。あの、僕やKくんが屈辱のノックア

ウト負けを喫したあのリング…ブルーのキャンバスには血のりの汚れが…リングの上に

は同じようにMくん、そしてKくんも会長と…シューズの「キュッキュッ」と言う音、

グローブがミットを叩く音、「シッ、シンッ、シュ」呼吸の音…

「KENNはサウスポーだろ」「はい…」ミット打ち開始…時々コーチが容赦なく右を

出す、僕も必死にガードや上半身を使って…でも時々強烈な…

「分かるか?KENN」コーチは僕をリングの外へ連れ出すと優しく教えだした。ふと

Kくんを探すと会長と一緒に出て行った。『何だろう???』。

「何回も言われてると思うけどお前は相手もサウスポー以外だと喧嘩四つって言ってな

、だからお前の試合はいつも…」

「いいか、身体で覚えるんだぞ、相手を中心に右へ右へ廻るんだ、右を出しながらな!

」いつのまにか嫌々だった僕も僕も必死になっていた。

新調のランニングシャツにも汗が滲んできた。「KENN!いいぞ!」コーチがミット

で僕の頭を撫ぜた。そして僕をマットに誘って2人で体育座りをして休憩…

「KENNはセンスあるなぁ!」「そうですか…」

「運動神経いいんだなぁ…鍛えて打たれ強く、それでパンチ力がつけば…」「…」

「そのシューズかっこいいな、よく似合うぞ!」「はあ…」

コーチは僕の脚を撫でながら…

「いい脚してるな!」「…Kくんほどじゃ…」

「馬鹿!変な意味じゃないぞ、フットワークのことだよ!」

「でもお前ら2人可愛いよな!」「…」

「お前やMがずっと俺について来れば俺も名トレーナーかもな!」

コーチは僕の頭をゲンコツで叩くと練習再開を促した…

その時だった、会長が僕を更衣室へ呼んだ。Kくんもいた。

「おい、このファールカップつけてみな!」

「2人とも脚長いしなローブローもらいやすいだろ!」

「Kくんなんかつけないと本当に女の子になぅっちゃうぞ!」

ちょっとムッとするKくん、でも嬉しそう?にファールカップを…

「よさそうだな!」部屋を出ると会長はみんなを集めた。

「今日はこれから試合形式のスパーリングをするからな!」

「…」

      続く

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